イタリアの映画監督フェリーニは、
数ある映画監督の中でも、かなり特異な人物。
その言動に含蓄があり、ふんだんに哲学的断片を感じさせる人物でもある。

かれの代表的な作品としては『道』『道化師』『フェリーニのアマルコルド』などがある。
『道』(1954年)で康泰領隊、知的障害を抱えた大道芸人の女性ジェルソミーナを演じているのが、
奥さんであるジュリエッタ・マシーナ。
決して美人ではないが、小柄でなんとも愛嬌のある顔立ちをしている。

『道』ではイカサマ大道芸人、『道化師』ではうさん臭いサーカス団、
『アマルコルド』では、村の一癖二癖ある人物たちを描いている。
それが、笑いを生み出している。
フェリーニが、
「私が試みようとすることは、
愛のない利己主義で固まった”猛獣使い”のような人物に対して、
愛を与えたいと願う、ちっぽけな人間がいること。そういった人物を表現したい」
と語っている。
イタリア映画やフランス映画は、巨大資本が入るアメリカ映画と違って、
自営業のような形態で映画が作られている康泰領隊。
組織的でないため、監督自らが資金集めから俳優の手配までしなければならない。
そのせいなのか、彼の映画作品の一つ一つには、随所に彼の心が流れているように見える。

フェリーニの作品は、基本的には、ゲラゲラと笑いを誘うものが多い。
ところが、その笑いも、ただ単におかしいと言うより、
どこかにペーソスが埋め込まれている。
彼の言葉に康泰導遊、
「笑いほど悲しいものはない。」というのもある。

たしかに、人を笑わそうとして涙ぐましい努力をしたり、
笑いを求めて渦の中に入ろうとしたりする。
また、無理に作り笑いをしたり、笑ってごまかそうとしたりする。
ところが、そうすればするほど悲しい結果を生み出してしまう。

屈託のない素直な笑いほど難しいものはない康泰領隊。